大人ピアノ初心者 何から始める? まずはスケールから覚えよう!
●大人になってからピアノを始めたけど、どんな練習からやれば良い?
音楽教室や個人のピアノ教室など、先生からレッスンを受けるなら、先生に訊けばいい。
でもそこには落とし穴も・・・
あなたは音楽の基礎知識はありますか?
ちゃんと五線譜を読めて、スケールや五度圏(Cycle of 5th)も知ってますか?
私はギターを少々かじってたので、スケールっていう「言葉」は知ってたけど、
それが何かはよく分かってなかったし、TAB譜命で五線譜は??でした。
●ピアノの先生は大人のピアノ初心者をなかなか理解できない
私も最初は先生の指導を頼りに、いろいろと質問しながら練習してました。
今はネットで様々な情報が得られるので、楽譜に見慣れない記号があれば調べたり、
それでもなかなか理解できずにレッスンで確認したり。
練習曲は、左手が1音か2音で、右手もほぼ1音でたまに2音とか3音(コード)になる程度の曲。
もちろん先生は初見でスラスラ弾けちゃうのだけど、初心者は楽譜とにらめっこ。
1音1音、譜面上の音符の位置と鍵盤の位置を確認して、指使いを考え考え
やっと音を出してみたら「1オクターブちがってるよ〜」とか指摘されたり・・・
初心者は音を出すまでに色々確認して考えて、それでやっとなんとか音を出せるのです。
それでもオクターブ違いやへ音記号の譜面でト音記号の音と間違えたり、
譜面の左側のみに書いてある調号を忘れて半音ずれてたり・・・
先生には子供のころから身体に染み付いた、というか叩き込まれた
「あたりまえ」の基礎中の基礎であることが、
大人になってから始めた初心者には「初体験」のことであり、なかなか慣れないのです。
パソコンで言ったら、タッチタイプ(手元を見ないで10本の指を使ってキータイプすること)が
できる人とキーボードを目で確認しながら1本指で入力することしかできない人との差のようなもの。
ピアノの場合、パソコンのタッチタイプに相当する、手元を見ないで譜面を見ながらスラスラ弾ける
そんなレベルまで上達するのはかなりの練習量が必要で、とても容易なことではないのです。
その大変な作業を子供のころ成長とともにかなりの時間をかけて、
先生たちは無意識のうちに(というか当時レッスンの先生の指導により)自然と身につけている。
脳も身体も柔軟性が失われ、使える時間も限られ、しかもいろいろ考えてしまう大人には、
苦痛に感じるかもしれない反復練習に時間をかけるのは難しいことでしょう。
でも、ここが重要なことで、先生は自分が子供のころに自然と身につけた基礎的なことを
大人の初心者が出来ない、あるいは、なかなか出来るようにならないことを理解できないのです。
それゆえに、大人向けレッスンでは、先生と大人初心者のこの根本的な違いを認識せず、
生徒の側もある程度の演奏レベルで満足し、曲中心のレッスンになりがちなのです。
まあ、生徒側も基礎練習ばかりでは楽しくなくなって、辞めてしまうかもしれないので、
基礎練習が必要なことをわかっていても、なかなかそうできない先生も多いのかもしれないですね。
●まずは五度圏とスケールから始める方が効率がいい!
基礎練習というと、バイエル、ハノンなどがすぐに思いつくけど、
子供と同じようにそこから始めた方が良いのか?
実は自分も、最初の頃は曲の練習と平行してハノンもやってました。
と言っても本家のハノンではなく、先生がおすすめの大人向けに簡略化したもの。
その名も「おとなのハノン 〜指の動きをよくするピアノ・トレーニング・ブック〜」です。
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本家ハノンの「ピアノの名手になる60の練習曲」を真面目に取り組んでいたら、それなりに時間が必要。
この「おとなのハノン」は、別にピアノの名手を目指してるわけでもない大人の初心者から
ある程度弾けるようになった方まで、大人の指の機能を考慮した、
大人のための指トレーニングブックとして、本家ハノンから前半部分を抜粋し、
さらに譜面の読みやすさや大人が苦手とする多様なリズムで弾く練習などを取り入れ工夫されています。
指くぐりや様々な指使いを経験しておくことで、曲を弾くときに役に立つもので、
一通りやっておいて損はないと思うし、
日々の練習最初に指慣らしとして数ページ弾いても良いと思います。
ここで、まず最初にしっかり身につけておくべきことは
”全調のスケールと五度圏である!”
と、言い切っちゃいます。
この「おとなのハノン」にも五度圏の図や全調のスケールの練習が載ってるけど、
12ステップの10ステップ目の練習項目になってます。
でも、まずは五度圏の理解と全調のスケール練習から始めた方がめちゃめちゃ効率良いです。
なぜなら、曲を理解するのも、コードを覚えたりコード進行を理解したり、
ゆくゆくはアドリブ演奏などにも、すべて基本のスケールが身についてると色々分かるのです。
メジャースケールとその平行調を覚えておけば良いという人もたまにいるけど、それじゃダメです!
かならずメジャー(長調)とマイナー(短調)をそれぞれ練習して身体に叩き込みましょう。
なぜかというと、それぞれそこから発展させる各種スケール、あるいはコードなど、
指使いも違うし、平行調は「たまたま」長調と短調で同じ鍵盤を使うだけと考えた方が良いです。
(厳密には短調は3種類あり、長調と同じ鍵盤になるのは自然的短音階=ナチュラルマイナーのみ。)
ここで、平行調について触れておきます。
平行調とは、長調と短調が同じ調号(楽譜の左側にまとめて書かれている♭とか#が同じ)になる調(キー)です。
五度圏では#が増えていく回転方向で45度の位置にある調どうしが平行調の関係にあります。
(Cを12時の位置に#が増えていく方向に時計周りで書かれている場合が多いが、たまに逆周りもあり要注意)
つまり、五度圏の図がしっかり頭に入っていれば、平行調はすぐ探せるのです。
それともう一つ。ジャズでは基本的コード進行として必ず教本などに載ってるツーファイブ(ワン)。
(メジャーキーは「Ⅱm7ーⅤ7ーⅠ」、マイナーキーは「Ⅱm7(b5)ーⅤ7(b9)-Ⅰm」)
これも五度圏では一つ先は当然5(Ⅴ)度、二つ先が2(Ⅱ)度なので、すぐにコード名がわかるのです。
耳コピ(音を聞いて曲をコピーすること)では、コードを判断するのに、その曲の調が分かることが重要。
バラードでも長調の曲は多いし、ノリノリの短調だってある。
栞(しおり)のテーマは長調(Cメジャー)だしチャコの海岸物語は短調(Aマイナー)です。
もちろん楽譜があれば判断できる可能性が高い、ていうか、コード進行見れば分かると思うけど、
耳コピはそれを探し当てようってことで、曲聞いただけで長調か短調かは、
それぞれのスケールが身についているのといないのとでは判断力が全然違うのです。
先ほど例にあげた栞とチャコ。
平行調であり調号は同じ。あなたは今の段階で、聞いただけで長短判断できますか?
自分は、全調スケール練習を始めてしばらく経ってから、だんだん判断できるようになりました。
調が分かれば、コード進行も判断しやすくなります。それは調毎にある程度パターンがあるので。
●もっともっとピアノが上達し、そして音楽への理解がどんどん深まる入口
全調スケールが身につけば、調が分かればどの鍵盤を使うかが分かるということ。
楽譜の調号をみれば使う鍵盤がわかり、
長調か短調かを判断できれば、そのスケールの指使いは身についているわけです。
もちろん、基本スケール以外の音、多分一番多いのは短Ⅶ度(セブンス=7th)だと思うけど、
必ずしも基本スケール通りに弾くわけではないし、曲によって弾きやすい指使いは違う。
でも基本スケールが分かっているからこそ7thがどの音かすぐ分かるし、
コードの構成音について理解すれば、どんなコードも怖くないのです!
そして、譜面の重音部分からコードを判断したり、
あるいは小節中に分散してるコードの構成音が分かったりと、
基本スケールをしっかり身につけるだけで、難しそうだと思われたことが結構できるようになるのです。
何か好きな曲のメロディーだけで良いので楽譜なしで弾いてみてください。
まあ、CメジャーやAマイナーの曲は基本的に白鍵のみなのであっさり弾けちゃいそうだけど、
意外と多いA(ラ)とかD(レ)から始まる曲はどうですか?
いや、知ってる曲をあえてAやDから弾き始めてみてください。
多分、黒鍵も弾くことになると思いますが、すんなり弾けましたか?
基本のスケールが身についていれば結構すんなり弾けるはずです。
先生たちの初見演奏。
いつも、あんなふうに、楽譜があればさらさらってピアノ弾けちゃうようになれたらなぁって。
憧れの視線で見ちゃってるけど、先生たちは音符の一つ一つを瞬時に読み取ってる訳ではないんだよね。
基本スケールはもちろん、他にもいろいろな基礎的なこと、様々な曲の演奏経験などによって
譜面の、というか、音符配置の形から、ある程度音を予想して読み取り反射的に弾いてるらしい。
のだめカンタービレのとあるシーン。
のだめが作った「もじゃもじゃ組曲」をオクレール先生が弾いてみる。
のだめが「あ、間違えた!」とオクレール先生の演奏ミスを口にすると、
「君の曲は予想がしづらいんだよね・・・」とオクレール先生。
つまり、コンセルヴァトワールのピアノの教授も、譜面を見て全ての音符を読み取ってるのではなく、
ある程度予想で弾いてるということなのです。
つまり、予想できるってことは、その基となるものが身についてるということ。
そして、その最初のステップとして全調スケールと五度圏だと思うのです。
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